読み終えたので所感を。
所感
- アルツハイマー病の特効薬がなぜ出来ないのか、というテーマを基に、アルツハイマー病の歴史、それらにまつわる主題な研究、定義も含めたこれまでの歴史の問題点、そして作者等によるアルツハイマー解明のための新たなモデルの提案と、研究に関わる組織・政策について提言をしている。
- 脳の堆積物によってアルツハイマーが引き起こされる「アミロイドカスケード仮説」によって、他の仮説が冷遇されたり、アミロイドカスケード仮説を否定するデータを無視し、成果を求めてその仮説に固執したりした、などの問題点が語られていた。
- 特に他の考えを否定する危うさに、私は共感した。音声の分野でも、似たような話を聞いたことがあったからだ。
- 人が音を認識する際に、音情報だけで認識している考えと、口の動きのイメージも参照しているという考えがあり、前者が優遇され、後者が冷遇されたという話。
- ある仮説が正しい、という流れで盛り上がっているときに、実は分野全体が間違った方向に向かっている可能性がある、と思ったら少し恐怖を覚えた。
- 主流の考えが他の考えによってひっくり返る、というのは個人的には面白い流れだと思っているが、この本の状況だとそれが許されない。
- 国・企業・研究所の様々な思惑によって、研究の正しい方法が行われないことの理不尽さがよく伝わる
- 自分も他人の考えを気づかないうちに、頭ごなしに否定していて、それが長期的には不利益に繋げている可能性があるかもしれない
- 視野を狭めないようにしたいが、外的な要因で気づかないうちにそうなっている可能性が怖い
- 著者も、何故これほどまで、分野全体がアミロイドカスケード仮説に固執してしまったのか、というところに疑問を抱いていた
- 後になって振り返ったり、外部の人間が見たりしないと分からないものなのかもしれない